戻る |
ビデオカメラ用透視フィルター ミスターシースルー RT-82N RT-75L | |
<スペック> 対応フィルターサイズ 37ミリです、違うサイズは→(変換リング一覧へ) 透過波長など TR−80(RT-82N):波長800ナノメートル以上(近赤外線領域〜) TR−70(RT-75L):波長700ナノメートル以上(可視光の赤波長の一部〜) |
|
ミスターシースルーは、可視光線を吸収し赤外線を透過する機 能を持つビデオカメラ等用の光学フィルターです。ビデオカメラ と組み合わせて使うことで、いわゆる透視画像を得ることができ ます。ただ、無条件に透視画像が得られるか? というと、それ は「ノー」です。いくつかの条件を満たさせねばなりません。 【透けて見える理由】 モノが見えるのは、それに光があたって反射するためです。光 といえば一番身近なのは太陽光線です。太陽の光は、赤・橙・黄・ 緑・青・藍・紫といった具合に分けられます。いわゆる虹の色です。 ただし、これは人間の目で見える範囲での話です。実は赤の隣り に赤外線、紫の隣りに紫外線があります(図1参照)。赤外線はモノ を温める作用があることから、別名「熱線」、紫外線は殺菌作用 や日焼けを起こす原因になるため「化学線」とも呼ばれます。ハ チの目は紫外線にも感度があり、それを使って蜜のある花を見つ けるのだそうです。透視に関係してくるのは赤外線です。 赤外線は、可視光線より波長が長いため、よリモノの中に浸透 しやすい性質があります。ちなみに紫外線は、逆に反射されやす い点を利用し、肉眼では見えにくい指紋検出などにも使われてい ます。また、赤外線は水に吸収されます。したがって、水を含ん だモノも黒く見えます。 ビデオカメラに使われている‥CCD‥(Charge Coupled Device=電 荷結合素子)は可視光線に感度があるのはもちろんですが、実は赤 外線にも感度を持っています。 赤外線リモコンをビデオカメラで撮影すると、肉眼では光って いるように見えませんが、リモコンの先っぽの黒いプラスチック のところが光っているのがわかるのはこのためです。 ‥‥‥ここまでの理屈からすると、赤外線は通すが、可視光線は まったく通さない服を着ているとすれば、それをカメラを通して みると何も着ていないと同じになる‥‥‥…。 ちょっと、それは 早計です。問題なのは、CCDは可視光線にも感度があるわけです から、可視光線画像と赤外線画像が重なってしまうことになって しまいます。ですから、ミスターシースルーのように赤外線は通 すが、可視光線は通さないフィルターが必要になるわけです。 【ビデオカメラとあかりの問題】 ミスターシースルーには、TR−70とTR−80の2つのタイプがあり ます。TR−70は波長700ナノメートル以上を、TR−80は800ナノメ 一トル以上を通します。表1を見てください。700ナノメートルだ と赤の色が含まれます。それでは、画像が赤くなってしまうのじ やないか?‥‥‥実際、その通りです。TR−70を付けると全体に赤 い画像になります。 ミスターシースルーを作るにあたり、いろいろなビデオカメラ を試してみたところ、800ナノメートル以上だけを通すようにすると、 画面が極端に暗くなってしまうモデルがかなりありました。パナ ソニツク、キャノンなどのビデオカメラです。ソニーは、問題な いようです。そのため、透過性を生かしつつ、画面を明るくする ために赤の光を通すようにした結果生まれたのが、TR−70なのです。 ビデオカメラには、赤外線をカットするフィルターが組み込ま れています。lRCF(lnfraRed Cut Fllter)と業界では略称されている ようです。前述したようにカメラのCCDは赤外線(正確にいうなら 近赤外線の一部)にも感度があるために、赤外線を素通しさせると 露出が適正ではなくなるためです。ただ、完全に赤外線をカット してしまう能力はないようです。赤外線リモコンが明るく写るの が良い証拠です。透過撮影のためには、できることなら、このフ ィルターを取り外してしまいたいところですが、そうすると、今 度は、ふつうの撮影の時に困ってしまいます。 ビデオ以外に照明の問題もあります。今までの理屈からして、 透視撮影には赤外線が含まれる照明が必要なのはおわかりでしょう。 図2は太陽光、白熱電球、昼光色蛍光灯の各色の強さを示したグラ フです。 残念ながら、可視光線部分のみで、赤外線そのもののデータは 含まれていませんが、赤の部分の強さから、赤外線の強さが推測 できます。昼光色蛍光灯は780ナノメートル近辺が低いことから、 赤外線はきわめて弱いと判断できます。なお、昼光色蛍光灯とは 這差違苧諾詣詣驚蕊具諾漂欝に対し、より太 白熟電球は780ナノメートル近辺が一番強いくらいですから、赤 外線(近赤外線)はばっちりです。太陽光は白熱電球に比べると赤外 線の割合は少ないですが、夏の陽射しの熟さを考えてみても、赤 外線はじゅうぶんに含まれていると考えられます。 |
【実地検証・・・密着がポイント】 理屈はこれくらいにして、実際の効果を見ていただきましょう。 某写真週刊誌F誌の表紙です。上にかぶせたものは、濃い緑のナイ ロン100%の布、リップストップナイロンと呼ばれるもので、格子 の補強が入っています。ウインドブレーカーによく使われる素材 です。片面には撥水加工がしてあり、カメラ側には加工していな い側を向けています。いずれも(赤外線がいっぱいの…)直射日光下 で撮影しています。使ったビデオカメラは、ソニーの CCD一TRV92(H1−8)、DCR−TRVlO(DV)、パナソニツクの NV−DJlOO(DV)、キャノンのPVl(DV)です。■99年6月の時点で、 TRV−92はかなり前のモデル、TRVlO、PVlは最新モデル、 D」−100はちょっと前のモデルです。 ビデオカメラで撮影し、RCAジャック経由のアナログ信号でコ ンピュータに取り込んでいます。そのあと、写真を見やすくする ために、わずかに画像をシャープにする処理だけを加えています。 結論からいえば、透けるのはソニーのビデオカメラです。パナ ソニツクのNV−DJlOOは、3CCDを採用した高画質が売りのモデル ですが、透視にはあまり適していません。ちょっと乱暴な推測で すが、高級モデルは、透視には向かないような気します。キャノ ンのPVlは、その中間といった感じです。また、露出不足が顕著に 出るのは、遠景を撮影した場合です。直射日光下で、写真のよう な状態ですので、曇天や薄暗いところでは、もっと暗くなります。 TRVlOのナイトショット機能は対策後のものです。そのため近 接撮影では、TR−70、TR−80フィルターとも露出オーバーになり、 使いモノになりません(写真10)。写真をご覧になれば、おわかりの ように、赤い色が付き、透視能力がわずかに損なわれるが、どの メーカーのビデオカメラでも使えるのがTR−70、ソニーのビデオ カメラならTR−80ということになります。 透視撮影に関してのポイントとしては、透視される対象が透視 をさまたげるものに密着していることが絶対条件です。写真の透 視がうまくいっているケースでも、布をちょっとでも表紙から離 すと透視してくれなくなります。また、布が薄くても、コーティ ングの関係でダメな場合もあります。いわゆるアルミ蒸着(銀色の コーティング)はもともと赤外線(熱線)を反射する目的で行われて いますから、まず透視は不可能です。 カメラ側の露出設定も重要でしょう。TR−70、TR−80とも可視 光線をさえぎるのですから、露出が不足気味になります。暗いと 感じたら、ナイトモードとかスローシャッターなど暗い状況に対 応できる設定にしてください。なお、写真は、撮りませんでしたが、 ソニーのTRV92は、白熱電球下でも透視OKでした。 一文責:ロジ工・コーポレーション実験班− |